ドイツ政府、脱MicrosoftでOfficeもOSも乗り換える
ドイツ政府が3万台のPCについて、Linuxに乗り換えてLibreOfficeに乗り換える。昔のニュースでも拾ってしまったか?と思ったら2024年4月という今まさに出たニュースが流れてきました。
正直言って、この手のニュースはデジャヴュかと思うほど過去にも見てきたのですが、それだけMicrosoft Officeのコスト増がもはや見過ごせないレベルに到達してしまってるという事の裏返しではないかと。乗り換え先がLibreOfficeとは・・・
目次
LibreOfficeとは何者なのか?
オープンソースのOfficeスイート
LibreOfficeはオープンソースで開発が進められているオフィススイートで、Calc、Document、Impress、Base、Drawの5つで構成されてるパソコン用のソフトウェアです。Windows, Linux, macOS他に移植されてるクロスプラットフォームなアプリでもあります。
オープンソースですので日本語対応で誰でも無償で使えますし、Microsoft Office形式を読み込んだり、拡張機能でPDFを読み込めたりとなかなか高機能ではあります。Microsoft Office形式との互換性は完璧・・・とは言えないですが、まずまずじゃないですか?というのが印象。自分も今でも時々使っていたりするので便利な存在です。
他人とやり取りしないであったり、個人でちょっとしたことに使う程度であるならば正直言って、Microsoft365なんて個人で契約してPCにインストールなんてする必要は全く無いのは事実です(オーバースペックもいいところ)。
けれども現時点で脱Microsoft Officeが進んでる一番の対抗勢力はGoogle Workspaceであって、LibreOfficeではないという現実。そして未だに企業の現場にはWindowsとMicrosoft Officeから脱却出来てるとは言えず。デファクトスタンダードの強さと、Microsoft Officeのファイル形式に依存しきってしまってるので対して使いこなしているわけでもないのに、抜けられないという・・・
意外と歴史がある
元々、在りし日のSun Microsystemsが打倒Microsoftの武器の1つして、ドイツの企業を買収して手に入れたStarOfficeが事の始まり。なので、ドイツとは縁のあるソフトウェアと言えます。買収後にオープンソース化してOpenOffice.orgという形で配布を始めて、その後Sun自体がOracleに買収されるという大事件後に、Apacheへと移管。
しかし、開発が大幅に停滞し有志がフォークして作られたのがLibreOfficeで、開発者がいなくなったOpenOffice.orgはその後開発停止に至る。なので20年以上の紆余曲折があって現在も存在してるソフトウェアであるので意外と歴史があります。自分も当初ちょっと関わっていたりしました。
2006年、Google Apps for Your Domainの登場と、その後のiPhone / Androidの登場によって、世界のオフィス事情やコンピューティング環境のパラダイムシフトが起きてその勢いを一気に失い、PCというローカル環境⇒クラウド & スマートデバイスという大きな変化にはついていくことが出来ずに、現代に至るといった感じです。
現在の活動は活発とは言えない?
一時期、LibreOffice Online版を出すみたいな話もあったのですが、現在はリポジトリが凍結されてる始末。Android版やiOS版を出すなんて話もあったのだけれど、公式にはリリースされておらず個人が移植したAndrOpen Officeや、Collabora Officeがある状態。
ちょいちょいアップデートがリリースされているので現時点でも開発が続いているとは言えるのですが、インターフェースのあちこちにOpenOffice.org時代のものが未だに残り続けてる状態で、劇的に進化するであったり一大ムーブメントが起きてといったことは多分今後も無いのではないだろうか・・・
そもそもオープンソースで開発するにはオフィススイートはエンドユーザ要望が非常に強い製品であり、何よりも規模が大きい。OpenOffice.orgが開発停止に至った理由も資金切れでなかなかオープンソースと言っても開発に参画する人は少ないのではないだろうか。
有志がxlookupを拡張機能で実現みたいなニュースがあったりするので、なんだかんだ言っても細々と続いていく感じです。
過去にもあった乗り換え
ドイツでは過去にも2004年にミュンヘンで同様に移行するということがありました(Windowsの事例ですが)。しかし、2017年に現場の不満が爆発したのか、Windowsへ戻すという自体に至りました。
他にもイタリアやフランスでも同様のことがあり現在どうしてるのかなぁ・・と思う次第。IBMなんかもOpenOffice.orgベースのLotus Symphonyに移行するなんて言っておいて、2011年には開発を終了してしまっていたりします。
もともとこのタイミングでこの話が出てきてるのは、先日のTeams分離しろ騒動のデジタル市場法に絡むお話だと思われます。脱Microsoftは良い傾向だとは思うのですが、ことオフィススイートに関してはプロプライエタリじゃない製品で行けるか?といったら、なかなか厳しいと思いますよというのが、StarOffice時代から知ってる自分は思う・・・
以前の乗り換えのお話はどちらかというとコスト面でもう耐えられないから、LinuxとLibreOfficeに乗り換えるという方向性だったわけですが、なんとなくペンキ塗り変えでまた乗り換えると言い始めてるように見える。
個人的にはChromebookが良いと思う
今回また、Linux + LibreOfficeという組み合わせのニュースを聞いて思ったことが、「現代ならばChromebookとGoogle Workspace」のほうが良いのでは?と思った次第。Microsoft Officeよりもトータルでは低価格であると思うし、サポートもある。Chromebookならばセキュアであるし、なによりもLibreOfficeの過去の移行事例は決して成功した!!と言えるものではなかった記憶が。
今回の移行理由は「国民のデータをプロプライエタリな製品では守れない」というテーマがあるようなのですが、オープンソースソフトウェアならばそれが達成できるのか?というと最近もxz Utilにバックドアが・・・というニュースがあったばかり。何よりも、LibreOfficeの元になってるOpenOffice.orgについては開発維持出来ずに滅びてるわけです。
Sun Microsystemsが掲げていたテーマである「The Network is the Computer」や、Oracleが開発してコケた「Network Computer(NC)」、それを本当の意味で完成させて形にしたのはChromebookであり、スマートフォンなのではないかとシミジミと思う。
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