Microsoft365からTeamsが分離されてしまうようです
2024年4月より、Microsoftは新規のEnterprise向けMicrosoft365とTeamsのバンドル販売を辞めて、Teamsだけは独立したライセンスとするという発表を行いました。但しこれまでの契約については継続できるということなので、導入済み企業に関しては現行の契約のまま続行となるようです。、
※但し現時点ではまだMicrosoftのサイトのプラン比較では中身は変わってない様子。全世界で切り替えるということなので、そのうち内容が変わるのではないかと。
※E1〜E5までのプランはTeams無しプランとなり別途Teams Enterpriseが用意されるので追加する必要があるとのこと。
EUのいつもの独禁法取り締まり
今回の決定を下した一番の要因はEUによる毎度毎度の独禁法を理由とするMicrosoftへの狙い撃ち。それこそ、1990年代の頃から、対Microsoftに対して独禁法を理由とする制裁金や取り締まりは何度も行われてきました。
Internet Explorer、メディアプレーヤ、Microsoft Office、Windows Server、そして今回のTeams。
今回はそれだけじゃなく、2024年3月から本格施行のデジタル市場法という米国ビッグテック狙い撃ちの法律を持ち出して、MicrosoftだけじゃなくAppleやGoogle、Metaに対しても調査開始という。もともとEUはこうしたデジタル分野での大企業というものが数えるほどしかなく、徹底的に制裁金と規制を課しているものの、Amazonに対する追徴課税では逆転敗訴してたりもする。
もたらしてる雇用や利便性を無視して、一方的になんでも取り締まって金を毟り取ろうというようにしか見えず。そもそも、クラウドサービスのつかないMicrosoft365 Apps for BusinessというTeamsの無いバージョンも元々存在していたわけで、独占というにはちょっと難癖が苦しいのではないかと。TeamsのみのTeams Essentialというプランもあるにも関わらず。
SlackがTeamsバンドルで訴訟
自分自身は仕事でSlackを利用していますが、これまでの企業でもWebexであったり、Teamsであったり、Google Chatであったりコミュニケーションツールは様々なものを体験してきています。他にもLine WorksやらChatWorks、オープンソースのRocket Chatなど選択肢はたくさんあります。
2020年にSlackがMicrosoftに対してTeamsバンドルは独禁法違反だということで訴訟を起こしたことがあります。当時はビデオ会議機能がなく(現在のSlackコールに該当する)、そもそもTeamsは単なるコミュニケーションツールではなく、Teamsを業務のハブとして各種オフィスツールが連携してるというツールであるので、正直かなり無理のある訴訟だったと思います。
そもそも、単発のジャンルの製品でビジネスの世界で勝負しかけていくのは難易度高いというのは、Zoomなども同じようなポジションなのでよくわかると思うのだけれど、使い手側や管理する側からしたら、いちいちジャンルごとに違う製品を導入して管理って手間以外の何物でもないわけです。IEやOSでかつて独禁法で訴えられたというのは確かにその通りだけれど、現状のMicrosoft365は顧客が選んだ結果であって純粋に勝負で負けてるだけなのではないかと思います。
Google Workspaceは?
さて、同じようなオフィススイートというかグループウェアを売ってるGoogle Workspaceはどうなのか?デジタル市場法での調査対象にはなっているものの、過去には広告事業の分離売却を要求するであったり、1900億円の賠償金を課すなどMicrosoft同様に狙われてきました。
Google WorkspaceもGoogle Chatというコミュニケーションツールはあるものの、元々高機能ではないということなのか?今回の各社のニュースの中ではGoogle Chatを外して安くしろ的な話題にはなっていない様子。もともとGoogle Workspaceはメールを業務のハブとして横連携で各種アプリが存在するという手法であるため、Microsoft365とはちょっと文化が異なる。
Google Chat自体がGmailの一部分を担ってることからもオマケ的な印象。また、同レベルの機能を有するオフィスのプランで比較した場合、Microsoft365のほうがコスト的には高いので、仮にも今回の騒動でMicrosoft365 + Teamsがこれまでのバンドルプランよりも高くなるといったことが起きるのであれば、Google Workspaceへの移行という企業も出てくる可能性がある。度重なる値上げでMicrosoft365利用の企業のITコストは黙認できないレベルに来てるのは事実。
※とはいえ、Google Workspaceも相当値上げしてきているので、少しやすいからと乗り換えは簡単ではないし、移行コストも馬鹿にならない。今回の騒動の結果は注目していきたい話題です。
新Microsoft365プランの価格
窓の杜の速報にて、4月1日以降のMicrosoft365プランの新価格に関する情報が入っています。
自分の場合、テスト環境でMicrosoft365 Business Basicというプランです。今回のプラン変更の対象ではないので継続してTeams有りプランと新しくTeams無しプランが登場するようです。
- 従来のBusiness Basic:899円(Teams有り)
- 新版のBusiness Basic : 712円(Teams無し)
値差は187円程度。Teams Enterpriseは単体ですが787円。
ウェブでno Teamsと出てるE3で見てみると5059円/1月/1ユーザ。これまでのE3の価格が6300円であった。値差は1241円。no TeamsにTeams Enterpriseの価格を含めて比較すると、5846円/1月/1ユーザ。2024年3月時点の価格よりもTeams含めても安い。年契約やパートナー経由だとまた価格が安くなるとは言え、結果的には分離してTeams加えたほうが安くなってるような気がする・・・
では、この結果E3を使っていたような企業ユーザが例えばSlackに乗り換えるか?と言ったらまず無いでしょう。
※ちなみにGoogle Workspaceの最上位版であるEnterprise Plusは4080円(ディスカウントで3400円)、Enterpriseでも3120円(ディスカウントで2600円)であるので、Microsoft365のEnterprise価格はかなりの高額とも言えます(PC版のOfficeが含まれてる為)
関連リンク
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