Google WorkspaceでYoutubeチャンネルを運用するコツ - 前編

Youtubeで企業が独自にチャンネルを設けて発信してる事例はすでにもう沢山ありますが、その多くが公式チャンネルにも関わらずすでに何年も経過してるのに「再生回数が1万にも満たない」であったり、途中で力尽きて数年前から更新が途絶えてるであったり、登録者数が3桁しかいない等惨憺たる状況のものも多く見かけます。

有象無象の猛者と莫大な動画数、プロも集うYoutubeで戦っていく為の術をここでまとめてみたいと思います。これは通常のYoutuberであっても同じことが言える面が大きいのですが、とりわけ法人公式の動画は、一視聴者として見ていても面白くないなぁと思うものが沢山なので、それらを中心に切り込んでいきたいと思います。

今回前編では、動画作成前の心得的な内容をまとめています。

今回利用するツール等

なるべく低コストで、なるべく資料が豊富なもの、簡単なものに特化して今回は取り上げています。外注で動画を作成するのではなく自ら作成することが目標となります。できれば良いマイクであったり、スタジオで使うような照明機材といったハードウェアがあれば尚良いのですが、初めからそういった機材で入ってしまうと続かなくなるので、まずは小さく初めて大きく育てましょう

今回はスマフォやGoProといったカメラでの撮影も含めています。これらは動画である以上必須ですが、学習用の動画で人間や被写体が不要なケースでは使う必要はありません。

大解像度時代 - GoProで動画を作成する

なぜ法人公式チャンネルはつまらないのか?

法人公式チャンネルに限りませんが、見ていてつまらないなぁと思う動画は最初の30秒以内に離脱された上に、場合によってはブロックされこの世に存在しないものとして処理されてしまいます。ただ漠然と動画を作成しアップしたところで、現代のYoutubeは猛者が集まる世界だということを忘れてはいけません。そんな「法人公式動画つまらない」の特徴と理由をまとめてみました。これはプレゼンと共通する部分も多くあり、また一般Youtuberの動画であっても言えることがあります。

以下の内容は、外注の場合は概ね抑えて作成してくれますが、大抵つまらない動画になって納品されます。自分たちで作るからこそ、尖って面白いものが作れるのですが、外注ではそういった動画は作成してくれません。

喋りが致命的に駄目

多分、多くの企業公式チャンネルというかYoutubeで見ていて面白くないなと思われる最大のポイントがこの「喋りが致命的に駄目」という点。何が致命的なのかを列挙すると

  • 「あー」だとか「えっと」だとか、言葉につまり変な間が多い
  • トークに抑揚がないため、聞いていて眠くなる(逆にうるさいのも論外)
  • 喋りの内容が論理的に整理されてなく、聞いていてストレスになる(行ったり来たり、同じこと何度も喋ったり)
  • セールストークばかりで鬱陶しい(企業側の一方的な主張で、ユーザに利益をもたらなさない)
  • 動画のタイトルと話の内容がほぼ一致していない(通称釣り動画)
  • 喋り方が硬すぎで、見ていて窮屈。
  • トーク内容が攻撃的である
  • 視聴者置いてけぼりで、内輪で話をガンガン進めてしまう
  • 間のとり方は下手くそで、早口。逆にやたらと間をとる。
  • 演者によって、リテラシーレベルが明らかに異なる(特にレクチャー系動画)
  • キャラを作りすぎていて気持ち悪い
  • トーク内容が説教臭くて暗い話題(特に農家系動画に多い)
  • 喋りのクセが独特。それで成功するケースもあるけれど、大半はそれが理由で見られなくなる。
  • 丁寧な語り口調であれば良いと思ってる。しかし、実際には冗長で鬱陶しい。さっさと次行けというケースが多い(無駄に謙って話す内容は対人でも嫌われます)
  • ちょっとしたギャグを挟んで受けると思ってるが、実際にはドンズべりしてる。
  • 例え話がわかりにくい。また特定の趣味に偏ってる(但し例えば、自動車系動画ならば自動車業界全般でよく用いられてる内容で例えても問題はない。)

企業公式ホームページというのは、通常のYoutuberと違ってPRであったり、サービス利用方法のレクチャーであったり、また関連するテーマについて話すことが殆どになると思いますが、プレゼンが下手くそな演者の動画など人の可処分時間を奪うだけで、あっという間に人が寄り付かなくなります。また、喋りが得意じゃないということであるならば、VoiceVoxのような読み上げソフトを利用するであったり、ナレーションを上手な人で別に取り演者は喋らないというスタイルにするほうが良いでしょう。

Youtubeで今活躍してる人の多くがこれらはすべてカバーしてたりします(中には現役劇団員で早口であっても頭にスッと入るような素晴らしい人もいるような時代です)。喋りはテクニックです。落語や深夜ラジオといった世界でも面白いものは長寿で続いていますが、それは喋りが全てだからなので大いに聴き込んで参考にしましょう。で、これらがスキルとして求められるか?といったら、普通に求められます。Youtubeで演るということはそういうことです。

構成が致命的に駄目

素人とプロの動画の大きな差と言われてるのが構成。テレビでもつまらないものは「構成作家の能力が低いから」と言われるほどで、1つの大きなCHという構成とそこに含まれるコンテンツ1つ1つの構成、サブチャンネルという括りを活用して、見る側の心に刺さるようにするには、事前にどれだけ構成で作り込むかが重要です(構成は動画の設計図です)。

構成ことプロットを作る為には守らなければならない基本があります。

  • よくある事例で言えば「起承転結」「序破急」と呼ばれるもの
  • お笑いや小説でも同じ事が言え、全体の大きな構成→各章各論といった小分けはそれぞれ一貫しつつ、緩急が必要です。
  • 各コンテンツの構成内容がバラバラではなく一貫していること
  • 動画チャンネルのテーマに沿った内容であること。外れる内容であればサブチャンでやれと怒られます。
  • 構成が複雑で理解に苦しむ内容ではなく、コンパクトで長くて30分、できれば10分単位に収まるように作成する
  • ショート動画はどちらかというと客寄せ内容となるのでよりピンポイントに絞った次回予告的な構成で作る必要がある。
  • 動画作成テクニックともリンクしますが、場面展開や2カメ3カメのようにカット構成をどうするか?も構成勘案の重要な要素です。
  • 特定ジャンルの動画では間を取るシーンであえて、風景動画を差し込むこともあります。
  • 可もなく不可もなし、尖ってもいなければ凡庸で退屈な動画は、たとえ内容がしっかりしていても見られません。Youtubeでは尖っていないものは淘汰されます(さじ加減を間違えないようにしましょう)
  • レクチャー系となると、ただ演ってることの説明を棒読みしてるだけで、いかがでしたか?ブログと同じくらい内容が薄いものにしない
  • タイトル煽りが強めなのに、中身が全く伴っていない(緊急だのヤバいだの書いてるような動画がコレ)のはNG。
  • 専門性が高い内容なのに、中身が素人レベルのキュレーションサイトのような動画はNGです。
  • 特定の政治思想や思考に偏ってるものをベースとして構成してる動画は駄目です。思考の押しつけもよろしくない(感動ポルノと呼ばれてるような内容は代表例)
  • 動画視聴ターゲットが幅広いボリュームゾーンを目指しすぎてぼやけてる(今の時代、万人に受ける動画などありません)。テーマとターゲットはハッキリしましょう。
  • 歩きながら解説するような動画で、音声ノイズが酷かったりチラチラ周りに気を取られたりはNGです。

テレビはオワコンと言われても、さすがテレビなのです。放送されれば町中の小さな和菓子屋でも、昨日までなかった行列が発生する。そして、コンテンツはつまらなくても、放送する上での構成作家の能力でカバーして仕上げてるなぁ、見られる映像になってるなぁと思うものは健在です。一方で構成作家が変わった瞬間にゴミになることもしばしばあり、その結果テコ入れなんて初めて終わっていったテレビ番組も多々あります(逆にテコ入れで成功した事例はほぼない)。下手に構成を変えた場合多大なリスクがあるのです。

キャスティングが致命的に駄目

演者を出すタイプの動画は企業公式動画は多いと思います。しかし、前述の構成や喋りにも掛かってくるものですが、演者が致命的なケースを多々見受けられる。せっかく番組構成はよくてメインのMCの人の喋りがよくても、周りの演者がそれを駄目にしてるというケースです。これ、まんま今のテレビが嫌われてる内容そのものです。

  • オーバーリアクションで見ていてわざとらしいと感じる
  • メイン動画の前の前戯や小芝居が長すぎで鬱陶しい。くどいケースもある
  • 同じ文章と喋りでも、それが許される人間と許されない人間がいる。後者の場合、視聴者に反感を買う原因になる。(ヒカル氏の喋りを無名な演者がしたら嫌われるだけです)
  • 漢字の読み違い、表現の誤りなど知性に関わる面で駄目な人。企業公式の場合は割りと致命的です。
  • 逆になにかに多大に忖度や配慮をしすぎて、凡庸な内容しか話せない人(今テレビ業界が陥ってる側面がコレ)
  • 一方で、明らかに炎上すると思われる内容をそのまま喋ってしまう人。特に逆張りすればいいと思ってるケースが多い。
  • スラングを多用する人。ましてや狭い界隈でだけ通用してるようなワードは避けるべき。
  • 複数人構成のチャンネルの場合でとりわけ、専門性の高いチャンネルの場合、力量不足な人がいるケース。話が腰折れする。
  • キャスティングされていても殆ど会話していない

端的に言えば、ビジュアルがそこまでじゃなくても喋りが面白いのであれば、成立します。が、企業公式CHの内容によっては、喋りで誤魔化してるのがモロバレなので逆の評価を受ける可能性があります。よくよくキャスティングは考え、きちんと台本を用意し、吟味した上で演者の人には話してもらう必要がありますが、上記にもあるようになにかに多大に忖度してるような内容ならば、やらないほうがマシです。

編集テクニック上の問題点

この項目では編集テクニック上の問題点をまとめていますが、これも非常に多くの動画で見受けられるマイナスポイント。

  • メイン進行とは別に取り置きの動画を挟むときに、演者の顔をワイプで入れる(はっきり言って要らない。TVでよくやられてるが嫌われてるものの1つ)
  • 収益化してるチャンネルで、むやみやたらに広告を配置する。
  • 無駄で冗長な部分を編集でカットせずにそのまま垂れ流す。
  • 画面上に文字列による情報が多すぎる。にも関わらず、さっさと読み切れる時間を与えず次に進んでしまう。
  • 複数回に分割すべき内容を詰め込みすぎて、1つ1つの内容がチープになり全体的に駄目になる。
  • とにかく見せ方が下手。視聴者が見たい部分が見切れたり、見たくないようなものを延々と流したり、薄暗かったり、文字が小さすぎたり。
  • テロップは控えめに。逆に殆入れない動画であっても、500万再生をコンスタントに叩き出してる動画もあるくらいです。
  • 次のセクションやパートに移る前に、アイキャッチを入れずにいきなり進んでしまうのはNG。
  • サムネイルを動画から取ってきてしまうのはNG。必ずカメラで別にサムネ用に用意しておく。
  • 延々と演者を写してる。視聴者は演者が見たいわけじゃない。
  • 動画の作成本数とアップするタイミング投稿間隔が長すぎたりCHランクが下る原因になります。
  • 企業公式CHは動画収益を稼ぐための手段ではないにも関わらず、Youtuberがやりがちな収益追求のテクニックを行ってしまう。
  • エンタメ系のような撮って出しとは違い、企業公式CHは1本1本編集時間が大きく掛かるのは当然のこと。本数稼ぎに走ってチープな内容は出しては駄目。
  • ディープで尖った部分を上長に指摘されて削り倒してしまうのはNGです。CMを打つ場所ではないので、とことん自分の企業の尖ってる部分をアピらないと埋もれます。

編集力を高めていくことは重要ですが、とにかく場数を踏んでいくしかありません。故に専任担当者を配置していないのであれば、これらを達成するのは難しいでしょう。かといって、外注に出して作った動画をアップすれば見てもらえるほど甘い世界じゃなくなってるのがYoutubeです。

動画をブロックする手法

多くの人がYoutubeでは見たくない動画は手動で見ないようにしてるかと思いますし、一方で配信行ってる側もとにかく急上昇やおすすめに掲示されれば勝ちと思ってる節がありますが、その結果としてじわりじわり人々の間に広がってるのが「特定チャンネルをブロックする」というもの。せっかく見てもらいたいのに、ブロックリストに打ち込まれてこの世に存在しないものとして処理するテクニックは昔から存在します。

BlockTube

PC版やAndroid版のKiwi Browserは、Google Chromeの拡張機能を利用する事が可能です。BlockTubeはその代表格で、この拡張機能は公式開発ではないですが非常に強力なブロック機能で類似のものとして、Channel BlockerやYoutubeフィルタといったものがリリースされています。

BlockTubeはブロックしたチャンネルリストを出力して配布することも可能で、それらを逆にインポートして反映することが可能です。後述のオススメに表示しないと同じ作業をしたときに、一番下に「Block Channel」「Block Video」と出てくるので選ぶとブロックリストに登録されて一生出てこなくなります。

Android版のChromeは拡張機能が使えませんが、Kiwi BrwoserはPC用の拡張機能を使えるのでインストールして活用すると良いでしょう。こちらは逆にブロックリストから削除して復元することも可能なので非常にオススメです。

図:拡張機能で見えなくする

公式の方法

チャンネルをオススメに表示しない

公式にサポートされてる機能で、急上昇にならんで重要視される「オススメ」に対して、CHを表示させないようにする機能です。Workspace全体で規制できず、個人単位になる上にクッキーをクリアしたりすると過去にオススメ非表示にしたものがクリアされてしまうので弱い機能ですが、この手順でオフにされると有効である限り永遠にオススメには表示されなくなります。

  1. 動画、チャンネル、セクション、再生リスト上で有効です。
  2. ホーム画面に表示されたセクション上の対象の動画のタイトルにカーソルを合わせると、右側に「︙」が出てくる
  3. チャンネルをオススメに表示しないをクリックすると、ブラックリストに放り込まれる

但しこの機能で放り込まれたブラックリストは見ることはできず、取り消しもできないので要注意。クッキーをクリアしたりすると復活する。

図:嫌いなCHはここでカットされる

チャンネルでユーザを非表示にする

もう一つの方法として、見たくないYoutuberのチャンネルに入って、以下の作業を行うと抹消することが可能です。

  1. 対象のYoutuberのCHに入る
  2. CHタイトルの下が概要欄ですが、そこをクリックする
  3. 概要が出てきたら右下の方にあるユーザを報告をクリックする
  4. チャンネルでユーザを非表示にするをクリック
  5. 最後に送信をクリックする

図:これでCHそのものが出てこなくなる

Google Workspaceで規制する

これらの設定は最長24時間掛かることがあります。また、特定の動画の排除はGoogle基準で行われるので、通常期待されてるような規制ではないので、要注意です。

ざっくりと規制する

独自ドメインで利用可能なGoogle Workspaceの場合、管理コンソールから一定の規制を課す事が可能です。

  1. 管理コンソールにログインする
  2. アプリ=>その他のGoogleサービスを開く
  3. 2ページ目にYoutubeがいるのでクリックして開く
  4. 権限を開く
  5. デフォルトでは無制限にYoutubeを利用可能になっています
  6. Youtubeアクセス制限を高などにすると年齢レーティング基準に従って動画視聴が規制されます。

ファミリーリンクに近い保護者向け保護機能と同等の制限を掛けるものなので、CH単位でガッツリ規制するといったことではないのですが、かなりの動画が排除されます。またDNSで規制する手法であったりもしますので併用すると良いでしょう。

図:年齢基準でざっくり規制される

動画視聴を承認制にする

動画の視聴を承認制度にし、管理者によって承認された動画のみが視聴出来るといったような設定をすることが可能です。「動画を承認できる」にしておく必要があります。

  1. 管理コンソールにログインする
  2. アプリ=>その他のGoogleサービスを開く
  3. 2ページ目にYoutubeがいるのでクリックして開く
  4. コンテンツの設定を開く
  5. 組織内のログインしているユーザーは、制限された承認済みの動画のみを視聴できるにチェックを入れる
  6. 保存をクリックする
  7. 承認済みの動画はリスト化されていますので、✕をクリックすれば除外することも可能です。

但しこの設定も、前述の年齢をベースにレーティングしてるものとなってるので、拡張機能であるBlockTubeのように特定CHをターゲットに完全に封じるといったことは出来ません。つまり、Googleが制限していない動画は無制限に閲覧が可能です。この機能はGoogleがブロックした動画について承認許可を与えるものになります。

メリット・デメリット

メリット

企業公式でYoutubeチャンネルを持つメリットは非常に大きいです。いまや殆の人がスマフォを持つ時代(ガラケーはほぼ終了しました)。テレビやラジオだけが情報源という時代は完全に終わっています。故に、自分の企業を知ってもらう機会であったり、サービスを補完する目的であったり、間接的な利用者が増えることを期待して町おこし的な目的で作ったりと様々な観点から参入しています。

Youtubeは誰でも自由に無償で動画配信プラットフォームを利用できるという点が非常に強力であり、テレビCMでこれを行おうとしたら莫大な金額が必要となります。

また、世界に向けて発信がされているので、自身のチャンネル動画に対して他国の字幕データを追加すれば、言語自体は日本語であっても字幕で世界の人に見つけてもらえるチャンスがあります。現時点でここまでの影響力を持つ媒体はYoutube以外ではほぼ存在していません。

とりわけ人材確保の観点から言えば、文字だけのウェブサイトを見て応募してくるという時代は終わっているので、自分たちの仕事の生の様子や就活をしてる方々の不安解消、また魅力を伝えるという点で動画素材というのは文字では実現できないものがあります。単純に売上だけ期待して参入するならやめておいたほうが良いでしょう。

※また動画作成という大変なことにも注力してるという意味では企業に対する信頼性向上や他企業との差別化に大きく貢献します。

デメリット

デメリットはかなりわかりきっています。運用コスト、ノウハウの社内蓄積、動画の効果。これはYoutubeに限らず、広報という観点と組織運営上つきまとう問題です。

運用コストについて言えば、前述のソフトウェアやハードウェア、人材という3つが主な内容です。場合によっては外注費も含まれるでしょう。

ノウハウの社内蓄積は結構深刻で、専任担当者を設けないで初めてしまってる企業の場合、現在片手間でやってる担当者がいなくなると終わります。またせっかく作った動画を営業等が全然活用しないという非常に悪い企業風土の場合、その効果を得ることは難しく、当然動画作成や運営のノウハウが企業に残ることがありません。専任担当者を置いてもサポートをせず任せすぎてブラックボックス化というケースもあります。

そして動画の効果ですが、経営層はすぐにチャンネル設置の効果を求めがちです。Youtubeはこれまでも書いたように有象無象の猛者やハイレベルな演者の集まりです。そこに参加していこうというのですから、天下一武道会の予選で敗退なんて当たり前の世界です。そこで戦い抜いて、視聴者に刺さるような動画を出し続けて初めて得られるのが登録者数数万人の世界です。最低でも3年は専任で没頭しとにかくアップし続けるといった地道な活動の報酬が成果に繋がります。

故に短期で効果を望むような企業にはYoutubeは全く向いていない世界だと言えます。

動画を作成する事前準備

Google WorkspaceでもYoutubeのチャンネルを作成することができます。それだけでなく、自身の企業のサイトの方針やイメージ、配信するコンテンツ内容については前述の通りよく吟味した上で、構成や配信体制を構築した上でスタートしましょう。フワっとスタートすると後で取り返しがつかなくなったり、更新されずに放置されたりと悲惨な末路を辿ることになります。これもまた立派な業務の1つであるため、部署を1つ設けるくらいのしっかりした内容を考える必要があります。

ブランドアカウントの作成

初めにやりがちなのですが、例えば通常のアカウントでそのままチャンネルを作って運用を開始してしまうというケース。これ、担当者が退職してアカウントを削除してしまうとチャンネルも削除されてしまいます。結果担当者のアカウントを延々と延命することになりその分余計にライセンス費用を払い続けるという結果を招くことになります。

かといってYoutubeチャンネル専用のアカウントを用意してというのも同様にコスト面での問題は一生涯つきまとうことになります。

ではどうするか?チャンネルを作る場合にはブランドアカウントを作って対応し、そこへオーナーと管理者を複数参加させるのが答えになります。どのように作成するかは以下の通りです。ちなみにブランドアカウントの場合、1アカウントで最大100までチャンネルを設けることが可能になります。詳細な管理方法や、他のアカウントへの移行方法については別エントリーにまとめました。

Youtubeのブランドアカウント作成と移管

ソフトウェア

ここは最初にぶつかる障害です。動画編集ソフトは利用するユーザのスキルに大きく左右されるだけじゃなく、その後の後任者にまで影響を与える選択肢になります(引き継ぎが難しいと継続が難しくなる)。例えば高スキルを要求するAdobe AfterEffectsなどはアニメーションな動きを得意とする動画編集ソフトで、プロの動画編集者も使うソフトですが、スキルの低い人間にとっては非常に使いにくいです。要求するスキルの方向性も通常の動画編集ソフトとはだいぶことなります。

一方で、macOS付属のiMovieは非常にシンプルで割りと誰でも習得するのに時間を要しませんが、少し凝ったことをやろうとするとすぐに限界に到達してしまいます。

また、同じプロ向けとしてDavinci Resolveなども人気のソフトウェアなのですが、基本機能はすぐに習得できても高度な編集を触ろうと思うと、そのノウハウがあまりウェブで共有されていたり公開されていないので、知見が少ないソフトウェアは自分でなんとかする技術力が求められてしまいます。

一方、コストを気にしてフリーソフトやオープンソースであるAviutilOpenShotAvidemuxなどに手をだそうものなら、編集テクよりもソフトウェア自体の使い方で躓いたり、今どきの機能に対応していなかったり、知見がなく困るといったことも多数あります。知ってるとすごく便利なツールなのですが、メジャーではないという弱みはリテラシーのない者にとっては想像以上に大きな壁になります。

ということで、個人的には長く続いてきて知見も多く、そこそこの機能をカバーしつつ格安で買い切りで手に入るAdobe Premiere Elementsがオススメです。後方互換性もありますのでそのままサブスクのPremiere Proに以降することが出来るという強みもあります(macOSとWindowsの両方で使えるのも良いですね)。

図:入門はやはりElementsで

ハードウェア

企業で出したい動画やジャンルによってこのハードウェアの量が変わってきます。PCの操作などをレクチャーするだけの動画であるならば、カメラは必要ないと言えます。しかし演者を写したいということであるならば、今どきならばせめて2K対応以上のカメラが必要です(といっても高価なハンディカムを購入する必要性は薄いと思います)。

今は、iPhoneだけでも4K動画が撮影できてしまう時代で、リアルタイムな配信でも使えるレベルに到達してるため、企業でiPhoneを採用してるならばそれをカメラとして利用するのがベスト(また、iPhoneを固定するための三脚とマウンタもあると良いでしょう)。また、iPhoneじゃなくてもAndroidのハイエンドモデルは同様のスペックを備えていますし、これらスマートフォンが無いのであれば、GoProのようなアクションカメラを用意しても良いでしょう(ハンディカムを買うよりはずっと手頃ですし、利用がしやすいです)。

問題はここから先。

車載動画を加えたいとなると、スマフォの場合夏にオーバーヒートする可能性があります(GoProも同様ですが回避策がある)。そういったシーンでは逆にハンディカムのほうが安定して動画を撮影できるメリットがあります。手ブレ補正の強さもハンディカムのほうが断然上です。また、カメラ設置が難しい場合にはやはり専門のカメラである「ドラレコ」のほうが断然優位です。但しドラレコの場合は60fps対応でLED信号機に対応してる必要性(2K以上が望ましい)や、耐久性のためにMLCタイプのSDカードが必要であったり、SDカードも書き込みスピードが遅いものは使えません

更にトリッキーな場所での撮影となると、アクションカメラが役に立ちますが、そういった場所で安定的に撮る為の各種マウンタも必要でしょうし、料理動画で行くならば専用の照明も欠かせません。風景撮影で上空から取りたいならばドローンも必要になるでしょう。予算と方向性、ジャンルを見極めてどこから手を付けるか?計画的にこのあたりは考慮する必要があります。

レヴォーグは素敵なガジェット

スマートフォンで素敵な車載動画を作成する

専任担当者とチェックする体制

Youtubeチャンネルの運用は片手間で出来るものではありません。構成を考えたり、動画を撮影したり、編集したり、XやBlueskyでPRしたり、コメント対応したり、Analyticsで視聴者の解析をしたりとやらなければならない仕事がかなり膨大にあります。ましてや動画投稿間隔を短くしてとにかくCHを盛り上げていこうとなると作成者への負担は高まります。

その中で、企業公式チャンネルでは、チェック体制が必要にある場合があります。なぜチェック体制が必要なのか?前述の企業公式チャンネルのデメリットに直接関わる内容になります。

  1. 企業機密に関わる内容が写ってしまってる
  2. 露骨な営利目的の動画配信となってしまってる(これ実はYoutubeの規約違反になるのでBAN対象になります)
  3. 著作権侵害してる可能性のある素材を利用してしまってる
  4. 無許可撮影をしてる
  5. 動画内での発言などに暴言やセンシティブな内容が含まれてる
  6. コメントに対する返信が5.同様に危ういものが含まれてる
  7. 編集ミスが起きていてカットしきれていない、もしくはおかしな映像が紛れてる可能性
  8. 企業のイメージやポリシーに反する内容(動画そのものはBANになるようなものでなくても)

しかし全てをコントロールすることは不可能です。これらのリスクと付き合っていく必要があるのがYoutubeであり、企業公式チャンネルです。リテラシーの低い人材しかいないということであるならば、公式チャンネルはやめておいたほうが良いでしょう。逆に一定のリテラシーが保たれてる企業であればここはそこまで気にする必要性はありません。

Youtubeに於いて企業公式チャンネルが燃えたという実例はそこまで無く、むしろX(旧Twitter)のほうがそういった事例は山のようにあるので、動画というハードルによって防がれてる面があります。

ネタ切れを防ぐために

Youtubeでチャンネルを持っている人や企業全員が恐れているのが「ネタ切れ」。ネタ切れしたが故に総集編でお茶を濁してみたり、薄い内容をさらに薄めてパートを分けたもはや水のようになってるカルピスのようなコンテンツ。そしてテコ入れと称してそれまでの動画方針に全く合致しない別ジャンルを初めてみたり。ネタ切れは色々とチャンネルに対して悪い風を吹き込みます。

このネタ切れなのですが、チャンネルの方向性を尖らせるがあまり自分の動画コンテンツの内容に見えない縛りをつけてしまった結果でもあったりします。故に最初の最初の方向性が重要なのです(かといって万人受け狙ってのあまりにも漠然としたテーマで始めるのは論外)。

例えば車載動画というジャンルで行こうとした場合、車載動画というテーマならば良いのですがここに「酷道の車載動画」という形でチャンネルを作った場合、酷道のネタに縛られることになります。しかし、酷道のネタはそんなに豊富にあるわけでもなく、また撮影しに行くのも非常に大変です。一方で車の総合チャンネルという形であれば、そこまで漠然としてるわけでもないので、カー用品のレビューであったり、酷道の車載動画であったり、道路にまつわる社会問題を取材したりと様々な方向性で動画を作成する事が可能です(但し総合を謳ってる以上、幅広くネタを扱う必要性があるので、労力も数倍掛かることになります)。

更に、最初の最初で張り切って1本の動画に本来ならば複数個に分割出来る内容を詰めてしまい、たしかにマニアックで良い動画なのですが、1本でネタを複数使い切ってる状態になり、後の動画を作る上で困ったことになってしまいます。ブログでも同じことが言えますが、自分のできうる範囲を見極めてテーマを設定しつつ、1本あたりの動画は薄くなりすぎない程度のサイズとし、シリーズ物としていくといったような戦略が必要になります。

企業公式チャンネルの場合、あまり幅広いジャンルというのを設定することは稀なのでネタ切れし易い傾向にあります。いかに広げ、また広げすぎないようにするか?のさじ加減が必要になりますので、最初のチャンネル全体の構成は時間を掛けて設定しましょう。また、専任担当者一人でネタ考えるのも大変なことなので、社内のメンツからネタの供出をしてもらえるような企業風土も必要になってきます。

モデレータの準備

ライブ配信や動画のコメント欄のコメントの承認作業など、自分で動画の作成や編集、アップ、管理までやっていてこの作業となるとなかなかの作業負荷になります。そうなると動画作成ペースも落ちますし感覚も開いてしまう。そこで分業の1つとしてモデレータを用意しておくということを割りと規模の大きいチャンネルでは行っています。

しかし、企業公式チャンネルの多くがコメント欄を封じていたり、ライブ配信もコメント不可にしているケースが多いです。それはそれで手の1つなのですが、一方的な配信となり、またユーザからの評判が上がることは決してありません。そこで用意するのがモデレータ、つまりコメント管理者です

これらの担当者を配置して動画管理やライブ配信時に参加させることで、不適切なコメントを排除したりアカウントをチャンネルからBANすることが可能になります。しかし、特に動画のコメント欄であまり強力にコメントBANを行ってしまうと言論統制と取られかねないので、気に食わないという理由だけでコメントを排除しつづけると、のちのち炎上のキッカケになったりもするのでほどほどにしておく必要性はあります。

割りと皆が知ってるメジャーな動画CHでも、この言論統制とも言えるようなコメント制御をしてるCHは、結構バレています。誹謗中傷や脅迫ならともかく真っ当な批判や指摘事項についてまでコメントBANしてるチャンネルは、Youtube以外の媒体で今度は批判が拡大していく原因になるので、そもそもそのような指摘や批判を受けないような動画づくりが必要になります。

※ついたコメントに対して、丁寧にお礼のコメントや返信をするのもなかなか大変ですが、これもモデレータのお仕事の一つになります。

※それが故にリスクを取らないために、コメント欄封鎖を企業公式チャンネルではしてるケースが多いのです。

本当にYoutubeで配信するかどうか?

動画配信サイトとして絶大なシェアを支持を受けてるYoutubeですが、必ずしも自社のスタイルがそれに合致してるとは言えないシーンもあります。例えば、技術的な内容をレクチャーするものを無償で公開してしまうことになるので「オープンポリシーで企業にアタッチがあればそれでいい」と考えるならば、Youtubeで配信でも良いでしょう。またURLを知ってる人にだけアクセス可という設定が出来るので、無償ながらも一般公開しないというやり方もできます。

しかし、やはり動画作成はお金が掛かる上に一般公開する意義が薄い、動画に対しても技術料としてそこは頂きたいと考えるならばYoutubeは一番適していないサイトになります。そういったケースであるならば、Udemyにて有償で販売するであったり、自社独自のログオン管理をしたサイトを構築しての動画配信、またGoogle Driveを用いてのアクセス制御で公開するといった事が必要になります。

さらにライブ配信といった場合やコミュニティ運営(ユーザとの接点を持ちたいであったり、リアルタイムでのやり取りをしたい)といった場合には、Youtube Liveを使うだけじゃなく、Connpassといった専用のサイトを利用するのも一手です。IT系ではConnpassで勉強会を開くといったことが結構あります。

動画サイトの方向性、通常の動画とライブ配信と今は様々な選択肢があるため、それらを選択するなり組み合わせるなりして、自社コンテンツの充実を図っていくのが求められます。

ライブ配信について

通常の動画であるならば撮影した動画を編集し、エンコードしてアップするだけです。しかし、ライブ配信をするとなるとこれまでのハードウェアやソフトウェアでは足りません。

ハードウェア的に言うと、マイクや演者に当てる照明。もちろん通常の部屋でそのまま配信しても良いのですが、暗かったり音が聞き取りづらかったり。有名Youtuberになるとこのあたりはかなり拘る人も多く、また室外のような移動しながらの場合ならばピンマイクなども必要になってきます(iPhoneのカメラだけだと拾えないことが多々ある)。

ソフトウェア的に言うと、ライブ配信はカメラソースはiPhoneでも十分なのですが、OBS Studioのようなライブ配信用のソフトウェアが必要になります。また、ライブ配信は動画を撮影→エンコード→ストリーミングを同時に行っている為、そこそこのネット回線の太さや利用するPCのスペックを要求することになります。安物の事務用PCでは正直ちょっと厳しい。スマフォ一個で配信ということも出来ることはできますが、これもスマフォのスペックとWiFiが必要となるので、出先となると事前に電波状況を確認した上で配信を行わないとブツ切れになりかねません。

また、ライブ配信は編集ができないわけで、不用意な発言や写っちゃマズイものが写ってしまった場合はアカウントBANに即つながります。レクチャー系で言えば編集でごまかしの出来る撮り溜めと違い、リアルタイムで応答ができないといけないので演者の臨機応変な対応力も求められます。思ってる以上にライブ配信は壁が高いので、採用したい場合には事前の訓練やロケハン等準備が必要になります。

OBS Studioでライブ配信環境を作る

【総集編】生配信で起きた伝説級の放送事故18選/人気動画をゆっくり解説【作業用】

個人的に参考になる動画事例

前編最後に、自分がお気に入り登録していて非常に参考になる動画の作り方をしてるチャンネルを列挙してみたいと思います。日本の企業系のチャンネルで本当に参考になる!!といったものは正直自分にとってはありませんでした。

へんないきものチャンネル

【ゆっくり解説】115年続いた地方病「日本住血吸虫」の恐怖

科学系のレクチャー系動画では非常にわかりやすく、全体の構成もわかりやすく動画そのものの構成も参考になります。また、幅広い動物に関する内容をカバーしてるので、ネタの作り方をする上でも参考になります。

GoodSpeedVision

【Vol.116】「物流の2024年問題」”問題視している”のは、いままで物流業界を喰い物にしていた業界(人)だけ。これはある種の改革で、物流業界にようやく訪れた光明にもなりうる話【GS-RADIO】

車系動画で好んで見ていますが、結構辛口な面もありつつも、車の様々な技術的な解説や、運送業界にまつわる考察に切り込んでいたりと見どころが多いです。車系となると修理系やらドリフト系がやたらと見受けられるのですが、正直ネタが薄いので同じような動画を見させられるので、Goodさんのような動画の作り方は非常に参考になります。

まるっと農業日記

【家庭菜園】そのトマト枯れてませんか👀大玉トマトは難しい😲気になるトマト栽培の注意点🍅

農業系チャンネルとして新進気鋭ですが、個人的に一番おもしろいと思っています。他の農業系動画は見ていて気が滅入る、暗い話や説教臭い話、俺らの仕事は大変マウントの動画がやたらと農業系は見受けられるのですが、このチャンネルは内容も非常にわかりやすいだけじゃなく前向きで科学的で面白い。

滇西小哥

「一席一果」——生吃亦美味的木瓜【滇西小哥】

中国の料理系動画のチャンネルですが中国語がわからなくても見ていてわかる作りになっていて、テロップがほとんど無いのが特徴。にも関わらずコンスタントに500万再生以上を叩き出してる凄い人。日本のトップYoutuberなど敵じゃないです。カット割りが素晴らしく、余計な説明も一切つけない故に、世界で見られてる。そして何よりめちゃ美味しそう。

増満自動車

【原因調査】それ冤罪かも!?不運なメカニックを救いたい…何故か多発する2番点火プラグがすっぽ抜ける現象。その原因を調べてみると…

車系の中でもよくある修理系に見えて、この動画の凄い点はほとんど演者の方が喋らない。。しかし、もっと凄い点は他の修理系の動画では知識ご披露系が多い中で、この動画は徹底的にトライブルシューティングと解決までの過程を描いてる点。本物のプロってこういうことなんだなと思わせてくれる素晴らしいチャンネルです。

【素潜り漁師】マサル Masaru.

刺されたら死亡。最凶のバケモノを解体してみると。。。

料理系且つ漁師系の動画です。特に魚特化ですが、サブチャンネルに島への移住にまつわるチャンネルがありこちらも本当に面白い。常に面白い食材を追求していて中には「それ食べていいの?」という実験的な要素も多く飽きないチャンネルです。魚系というときまぐれクック氏がいますが昔とだいぶ方向性変わってきてしまったので見なくなってしまいました。

BSテレ東

都会を出て暮らそうよ BEYOND TOKYO 鹿児島県南九州市 | BSテレ東

さすがプロのテレ東のチャンネルで、特に都会を出て暮らそうよ Beyond Tokyoは、自分に多大な影響を与えてくれました。取材内容は非常によくまとまっていますし、全体の構成から進行、画面カット割り、ナレーション、通常のYoutuberでは到底真似が出来ない領域です。だからこそ参考になる動画と言えます。

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