ChromebookでWindowsアプリを動かしてみよう
2020年10月13日、Codeweavers社からChromeOS用のCrossOverがリリースされました。macOSユーザやLinuxユーザにとってはお馴染みのWineをベースにチューニングし、Windows用の実行ファイルを実行出来る環境のChromeOS版です。これまでも、Android向けにCrossOver on ChromeOS Betaなんてのを出してたりしますが、こちらは、Androidの上で動作する別物です。
現在、14日間のフリートライアルが可能で、商用製品ですがプランによって$39.95〜59.95なのは、CrossOver Macと変わらないですね。実際にインストールして試してみることにしました。
※但し、ベースがWineであるため、Intel CPUを搭載したChromebookでなければ動作しません(CPUのエミュレーションを行わない為、ARMなChromebookは対象外。ARMでx86のWineを動かすには、Box86を間に噛ませて動作させる方法があります。)
目次
今回使用するアプリ等
ChromeOSのLinuxコンテナ上に、WineをインストールしてWindowsアプリを実行する方法については、以下のエントリーで既に実施しています。オリジナルのWineで動かしてみたいという猛者は参考にしてみてください。
使い方
概要
macOSやLinuxユーザにはお馴染みのWineの商用製品版がCrossOverで、自分もmacOSではCrossOver Macを活用させて頂いています。昔は日本でもパッケージ販売していたのですが、現在はウェブ上でのみの販売。
オリジナルのWineとの違いは
- インストールに用いるボトルをGUIで管理が可能
- オリジナルよりも安定して動作するアプリケーションが豊富にある
- 付随してインストールが必要なライブラリなどが非常に簡単にインストール出来る(例えば、Visual Basic Runtimeなど)
- 面倒なフォント周りなどの調整はすべてCrossOverが調整してくれている
また、Wineであるため、Chromebookでは以下の利点があります。
- 本体は200MBほど。RAMは2GB以上がシステム要件です(今どきのChromebookなら普通に対象になります)
- CPUエミュレーションは行っていないので、仮想環境と違い高スペックである必要がない。
- また、仮想環境ではないのでWindowsは必要無いので、莫大なディスク容量を必要としない。
- シームレスにChromeOS上でWindowsアプリが実行されるので、フォルダを共有しておけばファイルのやり取りはとても楽。
- インストールや管理が超楽ちんなので、不要になったらボトルまるごと捨てればOK
- UIは普通に日本語対応。
仮想環境のように非常に多くのリソースを消費する事が無いのは大きなアドバンテージです。主な活用例については、以下のエントリーを参考にしてみてください。驚くほど様々なWindowsアプリが動作します。
CrossOverをインストールする
CrossOver for ChromeOSを謳ってはいますが、ChromeOS上にインストールして動作するわけではなく、ChromeOSに用意されているLinuxコンテナ(Debian Buster)上で動くので、実質的にはCrossOver Linuxと変わらないです。インストールが面倒なのでは・・・と怯む必要は全くありません。ものすごく簡単にインストールが可能です。
- Free TrialにてOSはChromeOS、名前、メアドを入れてDownload Trial Nowをクリック
- すると、Debian Package形式で、crossover_20.0.0-1.debというファイルがダウンロードされます。Linuxではお馴染みの形式ですね。
- ターミナルを起動・・・せずに、ChromeOS上でファイルアプリを開き、ダウンロードにある2.を直接ダブルクリック
- すると、Linuxコンテナでのアプリインストールのダイアログが出てくるので、インストールをクリック
これで、アプリの一覧画面にあるLinuxアプリにアイコンが登録されます。LinuxでWineをインストールするのが結構な手間と難易度な上に、ターミナルを一切使わず直接インストール出来てしまうのには驚きました。
図:ChromeOS上で直接インストール実行できちゃう
Windowsアプリをインストールしてみる
今回はいきなりハードル高めの、ずっと使っていなかった「一太郎8」をインストールしてみようと思います。USBディスクにインストーラ一式を詰めて、Chromebook 14aに接続。以下の手順でインストールをしてみた。USBディスクはLinuxと共有をしておきましょう。
- LinuxアプリからCrossOverを起動する
- ボトルも何もない状態ですが、「Windowsアプリケーションをインストール」をクリックする
- 上部のインストーラを選択をクリック
- インストーラファイルを選択をクリックする
- USBディスクは、homeディレクトリより上まで進んでから、/mnt/chromeos/removable/usbディスクの名前/インストーラのあるフォルダまで移動します。
- setup.exeなどを選んで開くをクリックします。
- 継続をクリックする
- インストールするアプリケーションでは、ichiと入れると一太郎2006あたりはリストにあるけれど、一太郎8は当然無い。ので、Unlisted Applicationを選択する
- ボトルの選択では、Windows2000を選択(一太郎8はWin95/NT4時代のアプリの為)
- 継続をクリックする
- インストールをクリックする。継続するか聞かれるので、はいを選択
- ボトルが作成されて、しばらく待つとインストーラが起動する。見慣れた一太郎のセットアップ画面が。今回は標準構成でインストールしてみます(130MBほど)
- インストールが完了したら、CrossOverの画面に戻って、閉じるをクリックして終了です。
- ボトル内に一太郎8のショートカットが作られているので、実行してみる。
- ちょっとバギーで起動しない場合は、一旦CrossOverを終了して、もう一度開き直してから実行する。
- なんと、起動した。
但し今回のアプリはあまりにも古いWindows95時代のものなので、非常にバギー。また、Linux環境上で動くので、日本語入力はMozcが事前に必要となる。この辺りがハードルになるかな?Windows2000以降のアプリであれば相当楽に動かせるはずです。また、日本語入力不要のIrfanViewなどのユーティリティ系などは実に簡単に動かせます。
それでも、結構あっさり起動まで持ち込めたので、さすがCrossOverです。ちなみに、アプリはLinuxアプリにも登録されているので、そのままシェルフに固定化できます。ので、ダイレクトに一太郎8が起動させることも可能。この辺りもCrossOver Macと同じで、ユーザの利便性がよく考えられています。
図:インストーラを探すのがちょっとだけ手間
図:ボトルの選択は重要
図:セットアップ画面が起動する
図:起動した
青鬼を起動してみた
WindowsXP時代のフリーゲームである「青鬼」を起動してみた。但しこのプログラムはインストーラではないのと、RPGツクールXPのランタイム、またフォントがないと真っ黒画面で文字が出ないので、対策が必要。
- CrossOverでは、WindowsXPのボトルを作っておく。
- RPGツクールXP RTPを事前にインストールが必要
- msgothic.ttcおよびmsmincho.ttcの2つをボトルのc:¥windows¥fontsに追加が必要(フォントリンクでVL Gothicでもいけるみたいだが)
- CrossOverで青鬼のgame.exeは、コマンドを実行で直接ChromeOSのフォルダのexeを指定して実行させる。ランチャー作成で登録も可能
ここで気がついたのが、予めLinuxコンテナにはVSCodeをインストールしていたが為に、Cドライブを開くとVSCodeで開くようになってた。。。2.のフォントをどうにかCドライブに入れる為には、VSCode上でターミナル操作して入れるか?windowsフォルダ直下のexplorer.exeがいるので、これを利用する。
また、ChromeOS側からも、ファイルアプリ⇒Linuxアプリで開き、非表示ファイルの表示を行う。.cxofficeというフォルダがあるので、開き、WindowsXP⇒drive_cといった具合にたどっていけば、CドライブのFontsフォルダに辿り着けますので、こちらからFontを入れることも可能ですし、ChromeOS側からファイルを弄ることも可能。
図:WineのフォルダはChromeOS側から操作が可能
音は若干ノイズが乗るけれど、きちんと出力され、キーボード操作でゲームは無事に進められた。
図:バッチリ起動。音も出るよ
図:なぜかCドライブを開くとVSCodeが起動した
Office2003をインストールしてみた
Chromebookでのウィークポイントとしてよく取り沙汰されるOffice。G SuiteやMicrosoft365があるけれど、やはりローカルのオフィスが欲しいという人は少なくない。しかし、仮想環境では低スペックなChromebookでは厳しい。しかし、WineことCrossOverならばエミュレーションをしていないので、低スペックでもOfficeを動かすには十分な力を出してくれます。
ということで、Office2003をインストールしてみました(CrossOver Macでインストールして動くのは確認済み)
CrossOverの時はバッチリ動作していましたが、以下のような感じ
- 日本語入力はMozc経由で入力が可能。一太郎8の時のような不安定さは無し。
- 但し日本語入力をオンにすると、オフにしようとするとChromebook側のGoogle IMEと干渉することがある
- ライセンスのアクティベーションもきちんと動いた
- ファイルの右クリックメニューにもきちんと登録されてる!!
十分動作してるかなと思います。さすが★5のレートがついてるだけある。動作に重さは感じない(XP時代のアプリなので、HP Chromebook 14aのスペックでも余裕。これが仮想環境となると動作は厳しい。Wineの威力恐るべしです)
図:CrossOverでは動作確認済みです
図:色々と関連ツールを自動でインストールしてくれる
図:Excel2003を起動してみた
図:ファイルの開くにも登録されてる
日本語関係
日本語入力関係
Linuxアプリはそのままでは日本語入力が出来ません。Chrome OS側のIMは使えないので、別途インストールと設定が必要です。この設定をしておくことでLinuxアプリで日本語の入力が可能になります。まずは、ターミナルから日本語入力システムMozcとテキストエディタnanoをインストールします。
1 |
sudo apt install fcitx fcitx-mozc nano |
つづいて、nanoで設定ファイルに3行追加して保存します。
1 |
sudo nano /etc/systemd/user/cros-garcon.service.d/cros-garcon-override.conf |
以下の設定を最終行に追加します。
1 2 3 |
Environment="GTK_IM_MODULE=fcitx" Environment="QT_IM_MODULE=fcitx" Environment="XMODIFIERS=@im=fcitx" |
保存は、Ctrl+Oキーで、終了はCtrl+Xキーで終了します。
続いて、以下のコマンドでmozcを自動起動するように設定ファイルを生成します。最後にexitを実行して終わらせましょう。
1 |
echo "/usr/bin/fcitx-autostart" >> ~/.sommelierrc |
ここで一旦、Linux環境を完全に終わらせます。ターミナルアイコンを右クリックして、「Linux(ベータ版)を終了」をクリックします。これを行わないと、次の作業でIMにリストが出てきません。
図:これでLinux環境の再起動になります
次に、mozcにIMを追加します。以下のコマンドをターミナルから入力します。
1 |
fcitx-configtool |
一番上に「キーボード – 英語」がいますが、そのままでもOK。但し、106日本語キーボードにしたい場合には、これを削除して別途キーボードを左下の+から追加する必要性があります。
図:mozcの設定画面
次に、アドオンタブに移動し、拡張にチェックを入れ、Fcitx XIM Frontendを選んで設定ボタンを押します。XIMでOn The Spotスタイルを使うにチェックを入れて、OKを押します。このウィンドウは閉じてしまってOKです。
図:拡張の設定変更
最後にIMの細かい設定変更をしたい場合には以下のコマンドを入力して、入力様式などのカスタマイズが可能です。かな入力にしてみたり、句読点の変更などなどですね。お好みです。日本語入力は、これまで通り左上のかな/英数でも良いですし、Ctrl+Spaceで切り替えが可能です。
1 |
/usr/lib/mozc/mozc_tool --mode=config_dialog |
図:入力カスタマイズはお好みで
日本語表示関係
Wineに付き物の日本語表示関係ですが、まず、手っ取り早いのは、以下のディレクトリにmsmincho.ttfなどのWindowsで標準的に使われてるフォントを直接入れてしまうことです。古いアプリほど文字化けしやすいのはメニューのフォントが直接指定されてるケースがあり、winecfgでのフォント指定が効かないケースがあるためです。
対象のフォルダは/.cxoffice/windows7/drive_c/windows/fontsのディレクトリです。
次に、以下のコマンドラインでLinuxのロケールがセットされるので、これをbashrcなどに入れておいて、起動時に有効化するなどの処置をしておくと良いでしょう。
1 2 |
sudo localectl set-locale LANG=ja_JP.UTF-8 LANGUAGE="ja_JP:ja" source /etc/default/locale |
また、ランチャーにCrossOverは登録されるのですが、AviUtlにPluginsフォルダを作って、とあるプラグインを入れたものの、なぜか認識せず。次項のCrossOverの本体を直接叩いて起動すると認識するという謎現象がありました。そこでセットアップしておくと、ランチャーで起動しても認識するという・・・・
図:AviUtl + MP4ファイル読み込ませられた
CrossOverの本体
CrossOverの本体は、/opt/cxoffice/bin/crossoverに当たります。なので、ターミナルから起動する場合には、これを直接叩くと起動しますが、初期状態だとこのフォルダにパスが通っていないのか?crossoverのみだと起動しないので、フルパス指定で起動する事が可能です。
図:nemoで該当のファイルを見つけた様子
インストール手順動画
1:30付近からが、実際のインストール手順になります。それまでは、ChromeOSでLinuxコンテナを有効にする為の手順です。
関連リンク
- 「Chrome Enterprise」でフル機能のWindowsアプリが利用可能に
- Parallels Desktop for Chromebook Enterprise、ネット接続不要でフル機能の Windows アプリケーションをChromebook で実行可能に
- CrossOver in a Linux VM on a Google Pixelbook: a Walkthrough
- CodeWeavers、Windows互換レイヤー「CrossOver 20 for macOS」を発表。今後はmacOS 11 Big SurとApple Silicon搭載のMacもサポート予定。
- Wineを使ってMacで『青鬼』をプレイしようとしたがダメだった
- 【実況】青鬼が10倍速で追いかけてくる『 超高速青鬼 』#2
- LinuxのWine環境で日本語周りをいい感じに設定するレジストリデータ