次期、macOS Bigsurより先のMacは、CPUについていよいよIntelに愛想尽かしてARM(Apple Silicon)に変更するということで、PowerPC以来の大規模な民族大移動が生じるわけなのですが、そうなると気になるのが仮想環境。すでにParallerlsはARM版を作ってるようで、VMwareもどうでるか楽しみです。
それに伴う朗報か、VMware Fusionが個人利用に限り無償化されました。macOSユーザは全員今すぐVMware Fusionを利用して仮想環境を構築することが可能です。今回は、無償化されたVMware Fusion 12を利用してみたいと思います。今回は、Macbook Pro 2016 + Catalinaでテストしています。
目次
今回利用するアプリ
過去にVMware Fusionの活用に関しては以下のエントリーでまとめてあるので、合わせて御覧ください。
VMware Fusion 12 Playerについて
概要
これまでVMware Fusion 3.x〜11.5まで長く付き合ってきましたが、いよいよ個人利用無償化。これでmacOSでVirtualBoxを使う事はなくなるかなぁと思います(パフォーマンスは明らかにVMware Fusionのほうが上です)。
さてこのVMware Fusion 12 Playerですが、Windows版のWorkstation Playerと同様に製品版と同じ機能がフルで利用可能です。商用利用時にはライセンスを購入してくださいというスタイルなので、個人利用に限り機能の制限なく利用が可能になっています。今回の12へのアップデートに伴って以下のような機能強化もなされています
- DirectX11に対応
- OpenGL4.1に対応
- Debian Busterに対応(他にもいくつかクライアントOSに追加対応)
- USB 3.1仮想デバイスに対応
- Hypervisor.frameworkに対応
- macOS Big Surのサポート
- eGPUに対応
- サンドボックス・グラフィックレンダリング・エンジンをサポート
- vctl、KindによるKubernetesクラスターのデプロイ対応
ゲーム関係がはかどりそうな機能強化です(特にeGPU対応であったり、DirectX11対応など)。これまでもFusion同様スナップショットなどは引き続き利用可能なので、使わない手はありません。また、Workstation側もWindows10 2004以降であれば、Hyper-Vとの共存が可能になったなど、大きな対応が加わっています。
※ただし、12からはmacOSのサポートバージョンはCatalina以上になってるので、それより前のMojaveなどではVMware Fusion 12はサポート対象外です
仮想環境を使う意義
VMware FusionやParallels、VirtualBoxやCrossOver Macなど、様々な仮想環境がありますがBootcampのあるmacOSでなぜ利用するのかといったら様々な意義があります。開発者じゃないから不要ということではなく、一般ユーザでも非常に恩恵を得る事ができます。
- MS-DOS〜Windows10まで幅広く対応してるので、過去の資産を再活用できる
- macOSでは動かない、動かなくなってしまったアプリを仮想環境下で動かすことができる(FusionはゲストOSにmacOSも対応してるので、過去macOSを動かせます)
- Windowsの様々なアプリをmacOS上で利用することができる(Linuxのアプリについても同様)
- スナップショットを取っておく事で、過去のその時点まで時間を巻き戻すことが可能(OSの設定変更前や、実験で壊れても元に戻せます)
- バックアップが非常に容易。vmdkのファイル一個をバックアップしておけば、仮想環境がウイルスに汚染や破壊されても上書きで簡単に修復することが可能
- ホストOSと共有しない独立した環境下であれば、怪しいプログラムの実行テストも可能
- 複数同時に別のOSを動かすことで、1台でサーバとクライアントの同時運用が可能
- macOSの環境を汚したくない場合、ゲストOSを用意してそちらで様々な環境構築やプログラム作成が可能
- macOSでは使えないけれどWindowsでは使える外付けデバイス(プリンタやUSB機器)をゲストOSに繋げれば利用可能
- Bootcampと異なり、OS切り替えで再起動など必要ない。同時に利用ができる(ARM macOSではBootcampは消滅予定。ARM版Windows10はOEM供給も一般市販も予定されていないため)
他にも細かい利点がたくさんあります。Windows用だから使えないであったり、もう動かなくなったからといって諦める必要がなくなるので、今でも自分はWindows95時代のゲームや古い業務用ソフトの検証、またLinuxで仕事用のサーバを立てて運用したりと、手放せない存在になっています。
インストール
無償ライセンスキー
取得手順
今回の作業の中で一番面倒でちょっと厄介なのが、このライセンスキーの取得手順。VMware側のサイトが少々おかしな事になっており、普通に該当ページから辿ろうとすると詰みます。以下の手順でライセンスの取得とインストーラを入手できました。
- Chromeを起動する
- myvmareにアカウントを作ってログインしておく
- こちらのリンクをクリックするとPersonal Use Licenseのページに行ける
- 行けないでページがリダイレクトしたどり付けない場合は、Safariに変えてみる(または、サイトの言語設定をUSに変更する)
- registerのボタンをクリックする
- ユーザ登録情報の確認ページが出るので、修正があれば修正してsign upをクリック
- License Keysが発行されるので控えておく
- 同じページの下の方にDownload Packageのセクションがあるので、Manually Downloadをクリックする
- ダウンロードが始まる
図:ここに辿りつければあとは大丈夫
図:ユーザ情報の最終確認
図:ライセンスキーが発行された
ライセンスキーの適用範囲
Fusionの無償ライセンスキーですが、Workstationのライセンスキーと共通の扱いになったため、このライセンス1つでWindows, macOS, Linuxと使える上に、3台まで利用が可能になっています。
- Workstaion用に1つ
- メインのMacbook Proに1つ
- 据え置き用のMac Miniに1つ
といった具合に複数のデバイスで利用が可能です。もちろん、ゲストOSのライセンスは使用数に応じて必要なので注意が必要です。
インストール手順
すでにVMware Fusion 11.5がインストールされてるマシンでしたが、そのままインストールすることでアップグレードされます。インストール手順は以下の通り
- ダウンロードしたDMGファイルをダブルクリックでマウントする
- 中に入ってるインストーラをダブルクリック
- 使用許諾が出るのでチェックして次に進む
- インストールが完了したらVMware Fusion 12を起動する
- ライセンス入力画面が出るので、取得済みの無償利用ライセンスのコードを入力し、続けるをクリック
- いつものVMware Fusionの画面が出てきたら完了
途中拡張機能がブロックされましたと出た場合の対処法ですが、以下の通り
- システム環境設定を開き、セキュリティとプライバシーをクリック
- プライバシータブを開き、左下の鍵をクリックして開けておく
- 画面収録の欄にあるVMware Fusionにチェックを入れる
- フルディスクアクセスでも同様にチェックを入れる
- アクセシビリティでも同様にチェックを入れる
通常はインストール中にこれらをバックグラウンドでやってくれるはずですが、トラブったらやってみましょう。
図:ライセンスキー入力画面
図:バージョン情報を見ると非商用目的のみのライセンスの表示が
図:VRAM関係の上限が引き上げられてる
図:起動でトラブったらここを見る
ゲストOSをインストールする
Windows10をインストールしてみる
もっともよく仮想環境で利用されるであろう、Windows10をVMware Fusion 12にインストールしてみます。OSのライセンスキーは別途用意が必要です(OS自体はウェブからダウンロードできます)。Windows10のイロハについては、膨大なので以下のエントリーにまとめてあります。トラブルが発生したらご覧ください(Build 1903まで対応しています)
Windows10のダウンロード
Windows10は誰でも自由にMicrosoftのサイトからダウンロードが可能になっています。以下の手順でISOファイルをダウンロードしておきましょう。
- Chromeを起動する
- ダウンロードサイトへ行く
- エディションの選択では、Windows10を選択し、確認をクリック
- 製品の言語の選択では、日本語を選びましょう。確認をクリック
- 32bitと64bitの選択が出ます。基本推奨は64bitですが、古い資産活用する場合には32bitのほうがオススメです(NTVDMを利用したいようなケース)
- ISOファイルがダウンロードされたら準備完了
図:64bit版はNTVDMが利用できない点が異なる
仮想環境の構築
ISOファイルが手に入ったら、VMware Fusionで仮想環境を構築します。
- VMware Fusionを起動する
- 左上の+ボタンをクリックして、新規をクリックします
- インストール方法を選択の画面では、ディスクまたはイメージからインストールをクリックし、続けるをクリック
- 先程のISOファイルをドラッグ・アンド・ドロップでディスクイメージをここにドラッグに入れます。
- 続けるをクリックする
- 簡易インストールを使用の画面では、Windows10で使うアカウントをここで準備できます。アカウント名とパスワードをセットして、プロダクトキーがあればここで入れておくことも可能。今回は使用せずに進みます。
- ファームウェアタイプですが、Windows10は64bitならUEFI、32bitならばレガシーBIOSを指定します。セキュアブートのチェックはせずに、続けるをクリック
- 設定のカスタマイズをクリックします
- まずは仮想環境を保存。ユーザのホームディレクトリの中にある書類→仮想環境の中にデフォルトで保存されます。
- 仮想環境の設定ですが様々なものがありますが、ここでは最低限必要なものだけをしておきます。
- プロセッサとメモリでは、2コア2048MBのメモリ割り当てで十分稼働しますが、快適な環境は4コア4096MBです。ただし、利用してるMacのスペックによるので、最大でもRAMについてはMacの半分までが上限でしょう。
- ディスプレイではグラフィックメモリを割り当てます。これもMacのメモリを分けてあげる項目なので、余裕がない場合は128MB、余裕がある場合は11.のRAM容量と合計してMacの半分のRAM容量くらいにとどめておくべきです。今回は256MBだけ割り当てます。
- これで最低限の設定は完了です。すでに再生ボタンのついた画面が出てるはずなので、クリックします。
- ISOファイルからブートが始まります。Enterキーを押して、Windows10のインストールを続行します。
- 言語の設定がでますが、次へをクリック
- いますぐインストールをクリック
- ライセンス認証画面は飛ばせますので、プロダクトキーがありませんをクリック
- HomeかProかを選ぶ画面。通常はProを推奨します(それなりのお値段しますが)。購入予定のライセンス、持っているライセンスに応じて変更します。
- ライセンス条項に同意のチェックを入れて次へをクリック
- 今回は新規なので、インストールの種類はカスタムをクリック
- ディスクの割当はおまかせなので、次へをクリック
- 途中、vmnet-natdへネットワーク受信接続を許可しますか?と聞かれるので、許可をクリックします
- お住まいの地域は日本を選んではいをクリック
- Microsoft IMEを選んではいをクリック
- 2つ目のキーボード追加はスキップする
- 設定する方法は、個人用に設定をクリックし次へをクリック
- アカウントの追加ですが、これはMicrosoftアカウントの事なので、持ってなければ左下のオフラインアカウントをクリック
- サインイン云々は無視して、左下の制限付きエクスペリエンスをクリック
- あなたのアカウント名とパスワードをここで入力
- セキュリティの質問はパスワードを忘れたとき用のアレです。3つ設定します
- デバイスのプライバシー設定ですが、基本全部オフでOK。同意をクリック
- アクティビティの履歴なんぞ要らないので、いいえをクリック
- Cortanaは死んだので今は実行しないをクリック
- これで、こんにちはが出てきて、Windows10のセットアップは完了です。ライセンス認証していない人はライセンスキーを取得して、改めて設定をしましょう。
※Ubuntuよりも要らない質問が多くてWindows10はインストールが未だに面倒ですね。
図:ISOファイルを指定した様子
図:リソースの割当過ぎは激遅になります
図:Windows10だと結構インストールに時間が掛かる
VMware Toolsのインストール
これでセットアップが完了ではありません。引き続き、VMware Fusion上にVMware Toolsを入れます。これを入れないとデスクトップ共有や時刻の同期、解像度の変更ができません。
- VMware Fusionのメニューより「仮想マシン」→「VMware Toolsのインストール」をクリック
- インストールをクリックすると、自動でセットアップが起動します。
- インストーラの指示に従って進めます。
- RetinaディスプレイなMacだとインストール直後、すごく文字や画面が小さいです(高解像度な為)
- 再起動すればインストールは完了します。
4.の問題はVMware Fusionの設定のディスプレイの中にある「Retinaディスプレイのフル解像度を使用」が有効になっている為です。自分はこれをオフで使っています。最高解像度が必要な快適な外部ディスプレイがある人はオンでも良いでしょう。
図:これをインストールしないと画面が固定サイズ
図:Retinaだと解像度が高すぎる
注意点
はじめて仮想環境を利用する人が戸惑うのが、仮想環境側に入ってマウス操作したら、macOS側にマウスカーソルが出てこなくなったというトラブル。VMware Toolsを入れていれば通常そのまま枠外に出てくれるのですが、出てこないケースもあります。このときはCommandキー+Controlキーを押すか?仮想デスクトップを切り替えて、マウスクリックするとマウスカーソルが出てきます。
他にもmacOS側とのファイルのやり取りでは、通常双方からのドラッグアンドドロップでファイルのやり取りができるのですが、できないケースに遭遇することも。VMware Fusion側で予め設定より共有からデスクトップを共有先として追加しておけば、ネットワークフォルダとしてWindows10側に表示されるので、こちらを経由して受け渡しが可能です。
これら2つは非常によくあるケースなので、仮想環境のイロハとして覚えておくと良いでしょう。
Parallelsからの引っ越し
今回の無償化に伴って、同じ仮想環境であるParallelsからの乗り換えを検討してる人もいるでしょう。しかし、双方に当然互換性はないので、そのままでは引っ越しはできません。手間が少ない引っ越し方法としては
- NHCを使って仮想HDDをVMDK形式に変換してVMware Fusionに取り込む
- OSのインストールは自分で行い、環境だけを引っ越しソフトで引っ越す
前者の場合、仮想環境をコンバートする事になるので、場合によってはNGなケースもありえます(自分はよく利用していますが)。操作方法については活用のページをご覧ください。ちなみに、VirtualBoxからも変換が可能です。
後者は、VMware Fusionで新しい仮想環境を作り、Windows10をインストールしておく。ParallelsとVMware双方の環境に引っ越しソフトをインストールしておき、アプリや設定、ファイルなどを引っ越しさせる方法です。こちらはOSインストールの手間はありますが、引っ越し後の設定はせずに済むのと、変換よりはトラブルはないでしょう。この手法はVirtualBoxからも引っ越しが可能です。
以下のエントリーを参考に引っ越しを検討してみてください。
関連リンク
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